× マサ 佐藤(まさ さとう/ウィラサクレック・フェアテックスジム/INNOVATIONスーパーライト級1位、RISEスーパーライト級5位、英雄伝説64kg級アジア王者、西日本統一ライト級王者、蹴拳ムエタイライト級王者、DBSライト級王者、元RKAライト級王者)
○ 切詰 大貴(きりつめ だいき/武勇会/INNOVATIONスーパーライト級2位)
判定0-3(46-49、46-50、46-50) 切詰を新王者と認定
前王者、橋本悟が引退返上した同タイトルを実績豊かな1位、マサ佐藤と無敗の新鋭2位、切詰で争う王座決定戦。
第1ラウンド、超タフネスとスロースターターで知られる佐藤が初手から意外と積極的に前進攻撃するところ、切詰は、高い右ストレートのロングショットと前蹴り軌道の左三日月蹴りで迎え撃つ。5ラウンド中、間断なく放たれるトゥキック(つま先蹴り)は、この大勝負に用意された空手出身の切詰の秘密兵器だったかもしれない。切詰の攻撃は全て精度が高く、しかも急所を的確に打ち抜いており、医師の卵(現役医大生)である切詰ならではの冷静確実さを連想させる。だがしかし、尋常ではない佐藤の頑丈さは、一撃で終わりかねない被弾をもろともせず、これまた前進を最終回まで止めることはなかった。両者とも初回からギアが上がっており、好勝負を予感させる。
第2ラウンド、ロングレンジで一方的にパンチとキックを射抜き倒したい切詰、飽くなき前進と頑丈で相手の心身を疲弊させ右フックや下段蹴り(佐藤も空手出身)などで粉砕したい佐藤という展開は、当然、クロスレンジになりがちで首相撲の展開になるが、そこで佐藤の肘打ち狙いの殺気が凄まじい。しかし、これを涼しい顔で予測していたかのようにかわす切詰のスマートさも際立つ。接近戦になるとクリンチが多く退屈な展開になりがちだが、この試合に関しては、両者の対照的(ヒートとクール)な闘志が相まみえてエキサイティングな様相がやまない。右ストレートの被弾か佐藤が鼻血を垂らすが、これをペロリと舐めとり意に介さない様子。
第3ラウンド、チン(顎の先端)を撃ち抜く右ストレート、テンプル(側頭部)に叩き込み頭を捻じり飛ばそうかという程の左フックをクリーンヒットさせる切詰の殺傷力は高いに違いないのだが、佐藤のタフは異常という他なく、前進もリターンブローもまったく緩まず、むしろ強度も速度も加速するようで、ゾンビウォーリアーっぷりは健在。しかし、攻勢点は、当然、一方的に攻撃をヒットさせ続ける切詰が取っているに違いなく、それは、このラウンド終了後にアナウンスされた「ジャッジ3者とも青コーナー切詰リード」を聞くまでもない具合。
第4ラウンド、それでも前進の佐藤は鬼気迫る迫力を増し、ポイントゲームは一方的に切詰が取っているにも関わらず、存在感は佐藤が上回る不思議な雰囲気。客席からは怒声で佐藤の声援が聞こえる。後半戦に強い佐藤が逆転を狙うも切詰の冷静沈着や手数は向上し、顎(右ストレート)、頭(左フック)、肝臓(左三日月蹴り)を狙うキラーショットは、頻度も強度も正確さも増し、蒼い炎も激しく燃え盛る。
最終回、第5ラウンド、採点が一方的であることは明白なだけに佐藤はダウンを奪うだけでなくノックアウトが必須となってしまう残酷な状況。佐藤の怒張する迫力がその理解度を表している。そんな展開を予期していたのだろう、切詰の対処は火炎車のような佐藤の特攻を冷静に受け流し、残酷に殺傷力高い加撃を続ける。だが、クールなドクターファイターの表情は、その戦いぶりとは違って苦悶に歪み、全身全霊で冷酷を保たせていることを隠し切れない様子。勝つことだけに徹するなら、切詰は、アウトボクシングとクリンチ的首相撲で時間稼ぎを行い、容易にベルトを巻く権利を得られる状態。それをしないどころか、倒しに行く姿勢を加速させる切詰は、この闘いとその後のキックボクサーロードへ懸ける強いデターミネーション(決意)を感じさせる。
試合終了のゴング。ここで判定を待つわけだが、ドローなら延長戦もある。が、その可能性に準備する必要はない明白。当然、結果は50-46の2ジャッジを含むユナニマスデシジョン(判定3-0)で切詰が完勝。プロデビューからの無敗記録を更新しての見事な戴冠となった。
余談で特筆したいのは、佐藤のケロリ具合。フルラウンド、普通の選手なら何度昏倒もしくは悶絶したかわからない程のダメージを負っているはずなのに足取り確かにリングを駆け下り苦笑いを浮かべていた。愚かな冗談だが、タフネスが採点ポイントに入るならこの試合判定は接戦だったことだろう。
四国の名門、武勇会にまたひとつ栄冠が加わった。師匠である武勇会館建速支部、かつて“闘ふ神主”と呼ばれた元INNOVATIONフェザー級王者、櫻木崇浩とツーショット写真に納まり、遠くから応援に駆け付けた沢山の応援団もリングに上がり喜びを分かち合った。ハンサムで高身長の医師の卵でキックボクシングチャンピオン、ファイターとしてだけでなく人間として完璧すぎる俊英は、勝利者マイクでスーパーメジャーRIZIN香川興行への出場希望を表明したが、INNOVATIONの大看板として今後の飛躍が大いに期待されるところだ。
切詰勝利者マイク
マサ佐藤選手は、気持ちが強くて、5ラウンドまできつい試合になったんですけど、それを想定して練習してきたので勝つことができました。いっぱい応援に来てくれてありがとうございます。INNOVATIONのベルトを獲ることができたので、KNOCK OUTやRISEには強い人がいると思うのでやらせてほしいです。それと是非、来年3月30日に香川県立アリーナで開催される「RIZIN.50」に僕を呼んでください。いい試合をするのでよろしくお願いします!
第8試合 セミファイナル ミドル級(72.57kg) 3分3回戦
◎ マイク・ジョー(Mike Joe/バトルフィールドTEAMJ.S.A/Bigbangスーパーウェルター級王者、WPMFインターコンチネンタル・ミドル級王者、WMCインターコンチネンタル・ミドル級王者)
× 磯谷 幸貴(いそや こうき/渡辺ジム/INNOVATIONスーパーウェルター級9位)
TKO 1ラウンド 2分1秒 レフェリーストップ 左膝蹴り
ムエタイ戦術を得意としながらK-1でも活躍する三冠王、マイク・ジョーがINNOVATION初登場。対するは、血気盛んな若手ランカー、磯谷幸貴。
1ラウンド、積極果敢に右ローキックを連打する磯谷の勢いにやや押され気味とみえるジョーだが、鋭く踏み込みぞっとする斬れ味を感じさせる右縦肘打ちを披露し、その直後、達人的な対さばきで見た目はほんの軽いカウンターに見えた左テンカオ(カウンター膝蹴り)で磯谷が悶絶。的確なタイミングで肝臓を射抜かれたか? たった一撃、壮絶なKOとなった。
マイク・ジョーの勝利者マイク
約10年ぶりにINNOVATIONに出ました。今、INNOVATIONミドル級王座は空位ですか? 4本目のベルトを狙っていて、欲しいなと思っているので、INNOVATIONも盛り上げていきたいので、今後も応援よろしくお願いします!
第7試合 バンタム級(53.52kg) 3分3回戦 肘打ちなし/ワンキャッチワンアタック
× 翔力(しょうり/拳伸ジム/INNOVATIONバンタム級8位)
〇 彪羽(ひょう/チーム小樽コンバット)
判定0-3(28-30、27-30、28-30)
第6試合 58.5kg契約 3分3R ※肘なし
× 夢叶(ゆめと/エムトーンジム/INNOVATIONスーパーフェザー級8位)
〇 三橋 空良(みつはし そら/サクシードジム)
判定0-3(29-30、29-30、28-30)
︎第5試合 フライ級(50.8kg) 3分3回戦 肘打ちなし
× 鴇田 波琉(ときた はる/モリタキックボクシングジム)
〇 石井 識規(いしい さとき/STRIFE)
判定0-3(28-30、28-30、28-30)
第4試合 ミドル級(72.57kg) 3分3回戦
〇 赤見内 竜太(あかみない りゅうた/モリタキックボクシングジム)
× ソムプラユン・ヒロキDANGERGYM(そむぷらゆん・ひろきでんじゃーじむ/ DANGER GYM)
判定3-0(30-28、30-27、30-28)
第3試合 エキジビションマッチ 勝敗なし
武寛(たけひろ/WINRAD GYM)
ビンラー・ストライフ(STRIF/INNOVATIONスーパーバンタム級1位)
※リオ(STRIFE)の負傷欠場により急遽変更。
第2試合 56.5kg契約 3分3回戦 肘打ちなし
◎ 翔龍(しょうりゅう/エボリューションムエタイジム)
× シオチャイ FJ KICKASS(しおちゃい えふじぇい きっくあす/FJ KICKASS)
TKO 1ラウンド 1分34秒 レフェリーストップ 左ボディフック
第1試合 ウェルター級(66.67kg) 2分3回戦 肘打ちなし
× 中嶋 翔吾(なかじま しょうご/HOSOKAWAジム)
◎ 清水 和也(しみず かずや/アルンジム)